井深梶之助日記の概要
明治学院の第二代総理を30年間にわたり務めた井深梶之助(1854-1940)が残した44冊の日記は、学院内の出来事ばかりではなく、井深の国際的な活動に加え、新島襄、大隈重信、渋沢栄一、津田梅子などの教育界をはじめとした幅広い交流などが記述されており、キリスト教教育の変遷や明治から昭和にかけての時代背景、さらに日記という日常から井深自身の価値観を伝える大変貴重な資料です。
井深梶之助日記公開の意義
井深日記は、明治・大正・昭和(初期)の三時代にわたります。それは日本が、日清戦争・日露戦争の勝利から、第一次世界大戦時の好景気を経て、日韓併合や満州国を成立させるまでの国勢拡張期に当たります。そのような時代に、井深梶之助は、当代を代表する教育者として、また日本キリスト教界の有力な指導者として、ナショナリズムの高まりと対峙し、その推進者と粘り強い交渉を重ね、ときには妥協を余儀なくされる立場にありました。つまり井深こそは、教育・宗教界の代表として時々の権力や権威と向き合ってきた人物であり、その事実関係の記録とその時々の当事者としての感情の吐露が井深日記なのです。
それゆえに、日本近代の光と影を、為政者の記録とはまたちがった視点で理解する有力な歴史資料であり、個人の生活記録を超えた、「公共性」を備えているということができます。
井深日記の出版とデジタルアーカイブの制作によって、歴史資料館が所蔵する未公開資料を研究者に提供するだけでなく、それを教育の現場で活用し、さらには一般の方々にも無償で公開することによって、この貴重な近代日本の証言を広く社会全体で共有いたします。
明治三十二年當用日記
井深梶之助日記翻刻公開プロジェクトのメンバー
このプロジェクトは明治学院大学キリスト教研究所と明治学院歴史資料館の共働プロジェクトとして進められています。
- 委員長:
- 植木献(キリスト教研究所)
- 編集委員:
- 嶋田彩司(キリスト教研究所)、田中祐介(キリスト教研究所)、
松本智子(歴史資料館)、細井守(歴史資料館)、小暮修也(歴史資料館)、眞島めぐみ(歴史資料館)